【試験】ITX68000L 書き直し 2026-09-18
今回は、私が制作・頒布しているX68000風MiniITXケース「ITX68000L」に、フロッピーディスクのイジェクトボタンとアクセスLEDを実装した話です。Windows上で動くX68000用エミュレータの動作を、筐体の物理的なボタンやLEDに連動させるという、もともと実現できると思っていなかったことを、たんぼさんたちと協力して形にしました。レトロPCの自作や、エミュレータの周辺機器化に興味のある方に向けて書いています。
予備知識:X68000シリーズ
X68000は、1987年にシャープが発売したパーソナルコンピュータで、現在では伝説のビンテージコンピュータとして知られています。最大6万5536色のグラフィックスやFM音源による音楽性能など、当時としては画期的な性能を備えており、少年たちの心を強く掴みました。
表現力の高さやコーディングのしやすさを武器に、X68000はコンピュータを使いこなすさまざまなクリエイターを排出しました。システムコールやハードウェア構成が公開されていたこともあって、自作や改造の文化も根づいた、特別なマシンだったと言えます。
予備知識:ITX68000L
ITX68000Lは、X68000の外観を再現したMiniITXマザーボード用のPCケースで、私が制作・頒布しているものです。一般的なMiniITXマザーボードに対応し、2.5スロット・長さ270mmまでのビデオカードまで搭載できるのが特徴です。
対応パーツや組み込みの手順は、私のブログの「グラボも入るぞ! ITX68000Lを紹介!」と「グラボも入る『ITX68000L』パーツ組み込み編!」の2記事に詳しく記載しています。今回の記事は、その筐体に追加した機能の話です。
すでに実装されているもの
ITX68000Lには、HDDのアクセスランプの点灯がすでに実装されています。X68000は電源のON/OFFに連動して、独特な点滅を行なうのですが、この挙動を忠実に再現しています。
一方で、X68000にあってITX68000Lにないものも2つありました。1つはフロッピーディスクのイジェクトボタン、もう1つはフロッピードライブのアクセスステータスを表示するLEDです。今回開発したのは、まさにこの2つです。
そもそも実現できると思っていなかった
長年Windowsで動かしているX68000のエミュレータについて、フロッピードライブに関する情報を物理的なLEDに連動させるなんてことができるのか、私は正直思っていなかった。エミュレータはあくまでソフトウェアの世界で、筐体のハードウェアにまで手を伸ばす発想が私にはなかったのです。
ところがSNSでそのことをつぶやいたところ、以前からお世話になっている「たんぼ」さんから「やってみよう」と声をかけていただきました。ここから、今回の開発が始まります。なお、XEiJ+tとXM6tというX68000用エミュレータを使うことで、今回実装した機能を利用できます。
テスト制作
本当に実現できるかを検証するために、まず秋月電子さんで「USB接続デジタル入出力モジュール」を購入しました。これをPCに接続し、エミュレータから信号を送ってLEDを点滅させる構成を試します。
Windows → X68000エミュレータ → USB接続デジタル入出力モジュール → LED、という流れでLEDを点滅させることに成功しました。エミュレータのフロッピーアクセス情報をUSB経由で取り出し、物理的なLEDに反映できることが実証されたのです。
本制作
ところが、テストに使った秋月電子のUSB接続デジタル入出力モジュールは、ITX68000Lの筐体に入らないことがわかりました。小型のモジュールを開発する必要があり、さらに専用のファームウェアの開発も必要になります。
そこで、秋月電子のモジュールに書かれている回路図を参考に、担当を振り分けることにしました。回路図はたんぼさんとふゆき、PCBはふゆきとたんぼさんの先輩、ファームウェアはたんぼさんが担当します。まさに最強布陣である。
嬉しいハプニング発生!
もともとは、フロッピーディスクのアクセスLEDだけの対応予定でした。しかし、せっかく基板をつくるのであれば、ディスクイジェクトボタンも対応しよう、ということになりました。
ええ、なんでもできるんですね。基板を1枚増やすコストはかかりますが、LEDとボタンをまとめて実装できるなら、筐体としての完成度は大きく上がります。この判断は、後の完成度を大きく左右するものになりました。
いうてもふゆきは素人
いうてもふゆきは素人です。ふゆきのKicadレベルは緑帯程度で、PCB設計の経験はほとんどありません。
たんぼさんの先輩に色々とご監修いただきつつ、試行錯誤を繰り返しました。回路の検証、レイアウトの修正、実装後の動作確認。素人だからこそ手間がかかる工程を、先輩方の知見を借りながら一つずつ乗り越えていきました。
ITX68000Lの見直し
LEDランプはもともと光らせる余地を残していたものの、イジェクトボタンは想定外でした。ボタンをどこに置くのか、どうやって筐体に組み込むのか、ゼロから考え直す必要があったのです。
CADデータの修正、押し心地の確認、コンパクトな筐体に無駄なく装着できるように小型化させるなど、実は困難を極めました。既存の筐体を壊さずに機能を追加するというのは、一見簡単なようでいて、寸法や強度、使い心地のバランスをすべて取り直す作業になります。
完成
完成したITX68000Lで、XM6tをつかい、大好きなゲームを動かしました。フロッピーディスクのアクセスもイジェクトボタンも、完璧に動作します。
実際にディスクが出てこないのが変な感じです。ボタンを押すと「カチッ」と音がしてLEDが点滅するのに、ディスクは出てこない。エミュレータの世界と現実の筐体が、ちょうどいい距離感で混ざり合っている、そんな感覚です。
あとがき
(ふゆきさんが書く)
表示するコメントがありません
表示するコメントがありません